ここ数年、やたらと「熟成肉」という言葉を目にするようになりました。
簡単にいうと、食肉である牛肉を一定期間熟成させることでさらに旨味を引き出した肉ですね。
一般的なレストランなどでも幅広く提供されています。
しかし、この熟成肉…言い方を変えれば腐っているという状況にも近いのでは?危険性はないの?という疑問もちらほら。
熟成肉は危険性はないのでしょうか。
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熟成肉とは
熟成肉が美味しいとされる理由は、熟成による「旨味成分の凝縮」です。
旨味成分が凝縮する理屈は、主に2つあります。
1つは、余計な水分を取り除くことで旨味成分の濃度が増えるということ。
もう1つは、熟成の過程で微生物の酵素によるタンパク質の分解が進み、旨味成分であるアミノ酸が増えるということ。
タンパク質が分解されることで、肉の繊維がほぐれて柔らかくなるというのもありますね。
チーズや納豆などの発酵食品に近いイメージでしょうか。
これらの働きによって、新鮮な肉よりも熟成肉の方が美味しいと感じることが多くなるのです。
また、肉を保存できる期間が伸びたり、従来であれば食肉に適さなかった乳牛や経産牛が美味しく食べられるようになったりするなど、メリットが多々あります。
熟成肉の作り方
熟成肉の作り方は大きく分けて2パターンあります。
ドライエイジングとウェットエイジングです。
どちらも管理が難しく、設備や手間のコストがかかります。
ドライエイジング
アメリカやヨーロッパで普及している元来の熟成肉は、ほとんどがドライエイジングによるものです。
低温環境下で、肉に直接風を当て続けることで余計な水分を無くすことで、旨味成分を凝縮させます。
熟成過程で表面が乾燥したり青カビに覆われたりしますが、青カビはチーズなどにも見られるようにカビに弱い人でなければ有害なものではありません。
表面が覆われるために中までカビが進行することはありません。
食べるときは、表面を削ること(トリミング)で中の柔らかい赤身部分だけを食べるのが一般的です。
ドライエイジングは、温度や湿度の管理に手間がかかるということ、削ることで重さが減るということなどから値段も高くなりがちです。
ウェットエイジング
ウェットエイジングは、布や真空パックで肉を覆って、乾燥させずに熟成させる方法です。
こちらも低温環境下で熟成させる手法ですが、乾燥させるわけではありません。
ドライエイジングに比べれば手間はかかりませんが、安全性を保つためには常に衛生状態をチェックする必要があります。
乾燥させるわけではないので、低温といえど菌が繁殖しやすい状態であるためです。
日本のレストラン(比較ファミリー向けのもの)などでは、ウェットエイジングによる熟成肉が多いとされています。
熟成肉の危険性
熟成肉のブームと共に指摘されるようになってきたが、熟成肉の危険性です。
日本の場合は、熟成肉の定義が決まっているわけではありません。
各社が独自の手法で熟成肉を作っていて、熟成期間が短くても熟成肉と謳っている場合もあります。
もちろん、一度食中毒事件などを起こせば会社の存続に関わりますから、衛生管理については細心の注意を払っていることは確かです。
家庭でやるならともかく、レストランや食肉業者がやる分には現代の日本においてはほとんど危険性はないといえます。
しかし、懸念されるのは、熟成肉ブームに乗っかって粗悪な業者が現れる可能性もあるということ。
ウェットエイジングであってもドライエイジングであっても、繊細な管理が求められます。
それでも管理方法については、各社の手法に任せているのが実情です。
熟成や発酵と腐敗は紙一重と言っても過言ではありません。
腐敗した肉を食べたときに考えられる危険性として、下痢や嘔吐の食中毒だけに限らず、後遺症が残る神経障害や発ガン性物質の発生を指摘する声もあります。
熟成肉に限らず、やはり食品は信頼できる業者を見極めることが大切になってきます。
また、熟成肉ブームだからと言って安易に家庭で試さない方が無難かもしれません。
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